もはや使い古された陳腐な言説のような気がするが、現代には情報が溢れている。ネット上には無限の情報が発信されており、「スマホでニュースやSNSを見始めたら止まらない」やら「YouTubeやTikTokで動画を見ていたら2時間たっていた」とか「知りたい事があって検索したのに、目に留まった関係ない情報をどんどんググって当初知りたかったことは覚えていない」といったことは一度は覚えがあるのではないだろうか。
一方で街中をはじめとした「リアル」にも情報はあふれている。日本は屋外広告の規制が少ないので、チェーン店をはじめとしたどの店も派手に店をPRしているし、都会だとデジタルサイネージも普及している(しかも音声付まである)。家に入ればテレビがある家はまだまだ一般的だし、家にいるときはとりあえずテレビを流しているという家庭も少なくないだろう。
企業が可処分時間を奪い合い、とにかく多くの情報に触れさせようとしてくる現代社会で暮らしていると、気が付けば大量の情報が脳に入ってきてパンクしそうな感覚を覚えることが少なくない。それで自分は触れる情報を意図的に制限するようにして、以前よりも精神的な疲労感を感じることを減らすことができた。
この記事では、実際に役立った情報過多で疲れた時の対処法と、それで得られた効果を紹介する。
情報収集を辞められないループを断ち切った8つの方法
筆者がスマホをいじることをはじめとした日常生活で発生する情報過多を断ち切るために試して効果があった方法は以下の8つだ。インターネットとの付き合いを見直すデジタルデトックスの要素が多いが、それだけではない。
1.とりあえずテレビをつけるのを辞めるー自分に無関係なことに振り回されない第一歩
情報過多への対策において自分の中で一番効果的だったのが、家に帰ったらとりあえずテレビをつけて、家の中で情報が強制的に入ってくる状況を辞めたことだ。実家にいるときは家族にテレビ好きが居たので常にテレビがついている状況だったが、一人暮らしを始めたのを契機にテレビそのものを家に置かないようにして、結果的にとりあえずテレビを付けるのをやめることができた。
テレビをとりあえずつけないことのメリットは、自分の人生と無関係などうでもいいことで悲しんだり、イライラしたり、怒ったりすることが無くなったことだ。芸能人のゴシップや社会での些細な事件をことさら大きく発信するワイドショーに代表されるように、テレビはどうでもいい情報を垂れ流して視聴者を感情的にする事を第一目標に置いているような番組が多いので、使わなくするだけで疲れを感じることが明らかに減った。
2.とりあえず動画を流すのをやめるー暇ですぐYouTubeやTikTokを流さない
情報過多への対策のうち、デジタルデトックスで重要になるのが、とりあえず動画を見る行為をやめることだ。
動画コンテンツは短時間で多くの情報を提供するほか、視覚と聴覚を同時に使うので情報の消化に使う頭のリソースも大きくなって疲労感を感じやすい。また、YouTubeやTikTokをはじめとした動画共有系のSNSはおすすめ機能が非常に優れているため、一度視聴し始めるとなかなかやめることができない中毒性を持っていて、情報を取り入れることがやめられない無限ループにハマりやすいのも要注意だ。
よって、暇さえあればYouTubeを開く癖を辞めるだけで情報の遮断には効果があった。
3.SNSはアプリ削除か通知を切るーとりあえず開くのはNG
情報過多への対策ではSNSの使用時間のコントロールも重要だ。SNSは私たちの日常生活に深く根付いているが、無限にスクロールできるフィードやハッシュタグに代表される、時間を浪費するような設計がされているため、情報収集がやめられなくなって時間が溶ける。よって、SNS断ちは情報過多への対策として非常に効果的である。
最も理想的な対策はアプリ自体をアンインストールして目につかないようにしてしまうことだ。実際、筆者はX(Twitter)やThreadsのようなテキストベースのSNSアプリはすべて削除した。Instagramは同僚などとの緩い繋がりを維持する事と、飲食店の検索に使用するために残したが、通知は切ってスマホ画面の目立たない位置に配置して日常的に触らないようにした。
現在の筆者がSNSを使う機会は、飲食店を探すときにInstagramを開くのと、猫の写真や動画を見るために時折ツイッターをPCから開くくらいだが、スマホをいじって何時間も立つような事態を減らすことができた実感がある。
4.ニュースアプリは乗り換え&通知はオフ
情報過多への対策としてSNSやテレビと距離を置いた後、次の大敵となるのがニュースアプリだ。SNS同様、広告収益で成り立っているニュースアプリはとにかく長時間使うユーザーを増やしたがっているので、アプリ内を回遊し続けるよう、大量の情報が目に入るように工夫して作られているので、読み始めると時間が溶けるのは珍しくない。
しかし、SNSと違ってニュースアプリの厄介なところは、世の中の大まかな動きを少しは知っておいたほうが何かと便利なことを考慮すると、完全にシャットアウトするのが良いとは言い切れない点にある。よって、アンインストールして完全に視界を消してしまうのではなく、シンプルで時間を食わないサービスに乗り換えることをおすすめする(もちろんニュースアプリも通知をオフにして、使いたいときにしか使わないのは大前提だ)。
筆者が個人的に愛用しているのはグーグルニュースだ。レイアウトがとにかく画面に情報を詰め込むようにできていないので、開いたとたんに大量の情報が入ってくることがない。また、1つのニュースに関して取り上げている複数メディアの記事を紹介してくれるので視点が偏ることを防げるし効率的に情報を集められる。ほかにも、トップページを含め読みたくないメディアをブロックできるため、しょうもないゴシップやSNSのまとめを垂れ流すバイラルメディアや極端な思想を持った媒体を排除できるメリットもある。
また、働いている業界に関連する情報は、専門のメディアをRSSリーダーでフォローすることで補っている。専門的なメディアほどニュースアプリには記事を配信していないので、RSSリーダーを使えば「仕事用のオリジナルニュースアプリ(ノイズなし)」を作ることは容易だ。
6.スクリーンタイムを設定して時間の使い過ぎを回避するー仕事での調べ物の無限ループを防ぐのにも使える
テレビ、動画、SNS、ニュースアプリとノイズの原因を排除していった後に取り入れたのが、スクリーンタイムの設定だ。例えば、iPhoneのスクリーンタイムではアプリごとの使用時間を制限できるので、出先での飲食店の検索に使うInstagramのような消せないSNSアプリの制御に活用できる。また、筆者はGoogleマップをはじめとした地図アプリを開くと面白そうなスポットを探し出して止まらない癖があるのでこちらも設定している。
予め設定するスクリーンタイム以外で、その都度スマホを使う時間を区切るのに役立つのはLINEで無料で使える「リマインくん」だ。日時を設定して好きなメッセージを通知できるリマインドアプリなのだが、情報収集を始める前に終わりの時間を設定しておけば、検索に夢中になっていても通知でお知らせしてくれるので、プライベートのスマホの使い過ぎだけでなく、仕事における、調べ物に夢中になって進捗が生まれない悲しい現象を防ぐのに役立つ。アラームのように大音量が響き渡るわけではないため、出先やオフィスで使えるのもメリットだ。
7.イヤホンで流す音楽にBGMやインストゥルメンタルを取り入れるー言葉は時にノイズになる
常に情報を頭に入れることを防ぐうえで意外と効果的だったのが、暇があるときにとりあえず歌詞がある音楽を流すのをやめて、BGMやインストゥルメンタルを聞く時間を取り入れることだ。
歌詞がある音楽は今でも好きだが、自分は結構歌詞をしっかり聞き取りながら聞いてしまうタイプなので、音楽が情報として入ってくることが多く頭が休まらない感覚が強かった。そこで、電車での移動時間などに聞く音楽をBGMやインストゥルメンタルに切り替えたところ、常に頭を使っている感覚がなくなり、疲労感をかなり減らすことができた。
現在は通勤中は必ずBGMを聞くようにしており、歌詞がある曲の鑑賞は一人で家でリラックスしている時を中心にする生活を送っている。
8.単独行動時にはノイズキャンセリング耳栓を使うー電気不要で無限に使える
単独行動で騒がしい街中や音楽がうるさい店舗に入るときに活用しているのが耳栓だ。筆者は人だらけの街である東京に住んでいるので、周りには人の話し声がするところのほうが多いし、デジタルサイネージの音声も溢れているので、耳が聞こえるだけでたくさんの情報が入ってきてしまう。そこで、必要な音は聞き取れる状態を保ちつつも、雑音をシャットアウトできるよう工夫した結果、耳栓に行きついた。
耳栓はノイズキャンセリング機能付きのイヤホンやヘッドフォンでも代用は可能で自身も当初はそうしていたのだが、イヤホンは電力を使うので使える時間は有限だし、スマホのバッテリーも消費するのが致命的な欠点だった。一方で、耳栓はアナログな製品なので充電が不要であり、時間を気にせず使えるのがメリットだと感じている。
筆者が愛用して耳栓のはLoopというブランドの物だ。肌に触れる使用感や形状はカナル型のイヤホン(※装着部がゴム製で耳の中に密着するアレ)と同じで違和感が少なく、音の遮断効果も良好でかつ、必要な音は聞こえるのでちょうどよい。耳栓にしては少々値が張るが、使いやすさを考えると満足している。
触れる情報を意図的に制限して感じた効果|不必要な怒りが減った
テレビの視聴を辞めてSNSをはじめとした時間を浪費するデジタルコンテンツとも一定の距離を保つようにしたことで感じた一番のメリットがこれで、不必要な怒りを感じることが明らかに減った。
テレビやスマートフォンから流れてくるニュースをはじめとした情報は、私たちの心や感情に影響を与える。SNSで何かに怒っている人を探すのに苦労しないように、それが負の感情を掻き立てることは珍しくない。しかし、日常生活で怒りを感じることはゼロではないものの、そう多いものではない。よって、無関係なニュースや刺激的な話題に触れなくなることで無駄に感情を揺さぶられることが無くなった結果、心の余裕が生まれた。
あなたもテレビやSNS、ニュースアプリなどの、頼まれてもいないのに大量の情報を送り付けてくる存在から距離を置くとともに、情報に触れる量をコントロールすると、人生をより豊かにすることができるはずだ。