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【実体験】通信制高校は大学進学で不利!推薦でも受験でも全日制に劣る理由

トラベラーズモルト

トラベラーズモルト

便利WEB編集部の中心メンバーの一人。普段は都内のIT企業にてマーケティング関連の仕事をしている。高校時代は怠けすぎて理由なく通信制高校に通うなど遊び優先の性格。現在の趣味は一人旅とウイスキー。ペンネームは某ジャパニーズウイスキーのブランドっぽい響きにしたが、好きな銘柄はスプリングバンク10年。

世間には通信制高校は大学進学で不利になるというイメージがあるようだ。これだけでは漠然としたネガティブなイメージとも取れるが、実際に通信制高校を卒業してストレートで大学に進学した筆者としては、実態も同じだと感じる。卒業生から見ても、通信制高校は大学進学に不利だ。

本記事のテーマは、そんな通信制高校が大学進学に不利な理由であり、実際に通信制高校を卒業した、当サイトの運営チームの2名(トラベラーズモルト・じゆとり)が、実体験を踏まえた生の情報をお伝えする。なお、「不利」であって「できない」わけではなく、自分の行動次第で良い大学への進学は十分に可能であることは付け加えておきたい。

通信制高校への入学を考えている人の参考になれば幸いだ。

【受験編】通信制高校が大学進学で不利な3つの理由

通常の学力試験で大学進学をする際に通信制高校が不利な理由は3つある。いずれも環境に起因するものだが、詳しく掘り下げて解説する。

1.一般的に授業のレベルが低い|一部の進学コースは除く

通信制高校でも授業が開講されているケースはもはや一般的だが、その内容のレベルは、一般的に全日制高校と比べて低い。一部の通信制高校に設けられている、大学進学や難関大学への進学を目的としたコースでは全日制高校の進学校に遜色ないかそれを上回るようなハイレベルの授業も行われているが、これは例外だ。

なお、通信制高校の授業のレベルが低い理由は、大半の卒業生が大学進学を見据えている都市部の一般的な全日制高校と比べて入学者の間口が広いことが理由だ。通信制高校は入学試験は無いか形式的なものであることが一般的で、入学する間口が広い。よって、通信制高校には高校卒業後に就職する者やそもそも進学か就職かも絞り込んでいない者を含め様々な生徒が集まる。

したがって、授業内容もとりあえず単位を取得して高校を卒業することを主眼と置いた無いようになってしまうのだ。よって、通信制高校で受ける授業だけでは、大学入試に必要な学力を身に着けることは難しい。授業が無くレポート提出だけで単位が取れる学校ならなおさらだ。

2.強制的に勉強させられる環境が無い|自己管理がすべての世界

前述したように、通信制高校には進学以外を進路に考えている生徒も多く在籍する関係上、授業も高校卒業を主眼に置いた内容・水準になりがちだ。よって、周囲の空気としても勉強に注力する雰囲気は無く、授業外で自習時間等の勉強時間が強制的に確保されることもない。

よって、強制的に勉強させられる機会が無い分、極端に言えば遊ぼうと思えばいくらでも遊べてしまう。つまり、勉強し、大学進学を成功させるには自己管理がすべてとなるのだ。

見方を変えれば、自己管理して自分で勉強できる人には問題ないし、この自由さが学校生活以外にやりたい事がある人にはプラスになる側面もある。ただし、周りに流されたり明確な目的を持てず、ダラダラしてしまうタイプの高校生だと、時間を浪費してしまう可能性は高い。よって、大学進学という視点ではマイナスであると言えるだろう。

3.通学タイプの学校でも周りが遊んでおり誘惑が多い

先述した強制的に勉強させられる環境が無いこととも似ているが、通信制高校は進学しない生徒や学力試験がほぼない専門学校に進学する生徒も多いこともあり、通学して授業を受けるタイプの学校でも周りが遊んでおり受検モードにならないことも多い。よって、勉強を考えていても周囲の誘惑が多いことも、大学進学にはマイナスポイントとなる。

先の結論と同じだが、自己管理が非常に重要となるのだ。

ちなみに、ここまでの内容は一般入試(学力試験)を前提にした通信制高校が進学に不利な理由であるが、実は指定校推薦やAO入試といった推薦入試においても不利な点が存在するので次項で述べる。

【推薦編】通信制高校が推薦入試やAO入試で不利な2つの理由

現在の大学入試では、指定校推薦やAO入試、公募推薦入試といった推薦入試も一般的である。通信制高校の生徒が大学受験する場合、このような推薦入試の出願においても全日制高校と比較して不利な点がある。

1.指定校推薦の枠が無いかレベルが低い

通信制高校から推薦入試を狙う際の一番の課題となるのが、指定校推薦の乏しさである。

通信制高校にも指定校推薦枠を持っている学校は多数存在するが、その多くが学力水準が低めの大学(いわゆる「大東亜帝国」以下)か専門学校であり、日東駒専(産近甲龍)やGMARCH(関関同立)以上のような、平均以上の大学の枠が無いことは普通である。昨今では推薦入試が入学者に占める割合は大きいため、指定校推薦の枠が期待できないことはデメリットといえる。

2.一部のAO入試や公募推薦・自己推薦が使えない

推薦入試には指定校推薦以外にも、AO入試や公募推薦、自己推薦といった自分で申し込みができる推薦入試が存在する。しかし、このような入試方法では、一部の大学や学科は通信制高校の生徒の出願を受け付けていないケースがみられる。

令和7年3月全日制の高等学校もしくは全日制の中等教育学校を卒業見込みの者で学校長の推薦を受けた者。

R7公募制推薦経営学部(専修大学)

上記は、専修大学経営学部の公募推薦の出願資格の抜粋であるが、このように、通信制高校や定時制高校といった全日制高校以外の生徒の出願を受け付けていない推薦入試も一部存在するのだ。

よって、場合によっては行きたい大学の推薦入試が使えない可能性があることもデメリットとして注意すべきである。なお、このようなケースが少数派であることには留意すべきだ。

【注意】通信制高校の学生というだけで受験自体は不利にはならない

ここまで述べたように通信制高校の生徒は推薦入試の出願において不利になることがあるが、実際に推薦入試を受験することになった段階において、受験時に通信制高校の生徒であることが不利になることは考えにくいことは注意が必要である。

推薦入試の評価項目は面接、小論文、志望理由書など多様であるが、これらの試験内容の中身や、これまでの人生経験といった人間性が重視される。よって、通信制高校の生徒であることで落とされる可能性は考えにくい。

実際、この記事を書いている「トラベラーズモルト」と「じゆとり」の両名は通信制高校の出身であるが、都内の日東駒専クラスの大学に指定校推薦ではない推薦入試で合格して入学した。

【まとめ】通信制高校からの進学は全日制以上に自分次第

最後に、ここまでの内容の総括として、通信制高校からの大学進学を考える際に抑えておくべきポイントをまとめる。

1.レベルを選ばないなら大学進学は簡単

通信制高校の授業で得られる学力水準では平均以上の偏差値(50以上)の大学への進学は難しい。一方で、通信制高校にも指定校推薦の枠はあり、大学にも学力を問わず入れるところがある。

よって、レベルを選べないのであれば、大学進学において、全日制高校と比較して特別苦労するポイントは特に存在しない。

2.良い大学を目指すなら自己管理や受験戦略がより重要に

一方で、平均以上の偏差値(50以上)の大学を目指す場合、全日制高校、とりわけ進学校と比較して自学自習や予備校での勉強が重要になるため、比較的、大学受験がハードモードになる。

ただし、通信制高校は授業時間が無い(=レポート作成のみ)か少ない(週5日通学しないことも普通)ことも多いことから、全日制高校より多い余暇の時間を使えば勉強時間は確保しやすい。よって、自己管理ができるなら問題は無いし、自分の受験に必要な科目を重点的に勉強するといった戦略的な入試対策も行える。

また、通信制高校は授業が簡単な分、良い成績を取りやすく、平均評定を上げやすい。よって、推薦入試でしばしば設けられる、満たすべき平均評定点の基準を突破しやすいという意外なメリットもある(実は筆者2名も最大限活用した)。よって、推薦も戦略的に受験すれば不利どころか有利な状況に持ち込める可能性もある。

3.自力で勉強したい人なら授業に余計な時間を取られないメリットもある

少数派ではあるが、学力自体は高いものの、高校の環境が合わなかったり自分の学力水準と周囲の乖離が激しいといった理由で、授業に頼らず自分で勉強したいという人もいる。想像しがたい人もいるかもしれないが、発達障害によって聴覚過敏(※物音に極度に敏感だったり、音で気が散りやすいなどの特性)を抱えているため、学力水準は高いものの一人で勉強したいというようなケースがこれだ(実は意外と多く筆者の周りでも居る)。

そのような人にとっては、余計な授業を聞く時間を最小限に抑え、独学や予備校での勉強に注力できるため、通信制高校の環境は強みになると言える。よって、通信制高校の特色は、進学という視点においてもマイナスの面だけではない。

4.【重要】進学のしやすさだけで通信制高校を否定しないほうが良い

最後に、これが一番重要な話として、大学進学のしやすさだけで通信制高校を否定するべきではないということを述べたい。これは、とりわけ親御さんに聞いていただきたい話である。

通信制高校への進学を考える理由は多種多様だが、一般的に通学の必要が無いか必要な日数が少ないという点で、通学の負担が少なく、自由時間も確保しやすいことが通信制高校ならではのメリットだ。よって、学校の勉強以外にどうしてもやりたい事があったり、現時点で不登校といった心を休める状態にある子供にとっては、このメリットは無視してよいものではない。

確かに、将来を見据えて今の行動を選択することは重要だ。ただし、今、本人が壊れたら将来どころの話ではないという視点も忘れてはいけない。

人に命令されて行った決断よりも、自分で下した決断の方が、将来、自分の人生を振り返ってみても納得できるものであるし、自分の意思を押し殺して生きることに伴う苦痛は大きい。また、壊れた心を回復させることには多大な時間と精神的な苦痛を伴うため、心を休める必要がある人間に無理をさせることは禁物だ。

ここまでの記事で述べたように、通信制高校は全日制高校と比べて大学進学にハンデがあることは否定できない。しかし、大学進学の有利不利だけを見て通信制高校の良し悪しを判断することは、進路を決める本人の意思や心身の状態を踏みにじる可能性が十分にあることには十分に注意してほしい。

なお、本記事の執筆者の一人である「じゆとり」が、不登校から通信制高校に進学し、大学に入って進学するまでの実体験をまとめた記事もある(ちなみに、それなりに良い会社に入っている)。興味があればこちらもどうぞ。

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5.【最後に】結局は自分次第!通信制高校に行った後にどうするかが重要

通信制高校には自由がある。だからやりたい事ができるし、心身を休めることもできる。だが、自由には責任が伴うため、手に入れた自由な時間をいかに使うかが将来を左右する。

通信制高校に行っても人生は終わらない。でも、通信制高校に行った後に時間を浪費し人生から逃げると人生が終わる。これを間違えてはいけない。

高校生活は人生の通過点に過ぎない。通信制高校に行ったとしても、将来を考えて行動すれば大学にも行けるし、就職もできる。人生は全く終わらない。1つの視点だけに囚われず、後悔しない選択を!

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トラベラーズモルト

便利WEB編集部の中心メンバーの一人。普段は都内のIT企業にてマーケティング関連の仕事をしている。高校時代は怠けすぎて理由なく通信制高校に通うなど遊び優先の性格。現在の趣味は一人旅とウイスキー。ペンネームは某ジャパニーズウイスキーのブランドっぽい響きにしたが、好きな銘柄はスプリングバンク10年。

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