投資がしやすい環境が整っている昨今、我が子の名義で証券口座の解説や投資信託の契約を行い、子供名義の資産形成をしようと考えている親御さんは多いのではないだろうか。お金も投資も子育ても情報は腐るほど転がっているので、子供名義の投資にしても、何が正解か調べれば調べるほどわからなくなる人もいるのではないかと思う。
筆者はこの記事を書いている2024年時点で20代前半であるが、親から自分名義で10年以上積み立てていた投資信託を継承し、現在も保有している。つまり、今あなたがやろうとしている子供名義での投資を実際にしてもらった立場だ。
その経験から言える結論は、「絶対にやったほうがいい。ただし、インデックスファンドの積立投資に限る。この条件を満たしていれば投信でもETFでも構わない」である。これはお金だけでなく、それ以上の価値がある資産を親からもらったことに気が付いたことで導き出した持論だ。
この記事は、そんな筆者の体験をもとに、子供名義で投資信託や積立投資をするメリットを解説していく。
【体験談】親が子供名義でインデックスファンドの投信を積み立てた結果
筆者の両親が積み立てていたのは、子供である筆者名義の投資信託である。始めた理由は本人も忘れていたが、元々子供名義で貯金していたのを投資に回す気になったらしい。実際に買っていた商品と原資、運用成果を公開する。
実際に買っていた商品と充てていた原資
うちの両親が買っていたのはセゾン投信の「セゾン・グローバルバランスファンド」だった。商品の特徴をざっくり簡単に紹介すると、米国と欧州を中心に、日本を含む世界の株式と債券のインデックスファンドに50%ずつ投資するというもので、長期投資を目的にしたいわゆるオルカンのインデックスファンドである。これに筆者が学生時代の主な時期だった2010年代を中心に投資していた。
信託報酬は2024年時点で0.56%以上あり、信託財産留保額も0.1%設定されているなど、新NISAがあり、ネット証券で低コストな投信がいくらでも選べる現在の投資環境で他と比べると正直見劣りする商品であるが、何せ当時はNISAすらなかったことを考えると、十分によい選択をしたといえるだろう。
投資の原資は生活費から捻出した貯蓄のほか、うちは親がサラリーマンとしてはかなり稼ぎが良かったため、児童手当などの給付金もほとんど丸々つっこんでくれていた。結果として、月に3万円程度は積立に回していた計算になる。
積み立てた元本の総額と大学卒業時点での評価額
大学卒業時点までに積み立てた元本の総額は350万円程度、対するリターンは、管理を引き継いだ大学卒業時点(=22歳)の時点の評価額ベースで550万円を超えていた。リターンは元本の約1.5倍と、大儲けはしていないが、堅実に利益を出していた計算になる。NISAを使っていないことで引かれる税金を考慮しても十分にプラスになる結果だ。
なお、ドルコスト平均法による積立投資に徹しており、投機的な投資や暴落時のナンピン買いなども一切行っていないため、コロナ後の株高といった市場の高騰時にも大儲けはしていない一方、コロナショックの直後をはじめとした暴落時でも元本割れすら起こしていない。
結果として、筆者は社会に出る時点で500万円を超える資産があるという、中流家庭の育ちとしてはかなり良い環境に恵まれた。しかし、親からもらったこの資産が与えてくれた一番の財産は、「お金ではなく教訓と知恵」だというのが筆者の持論である。その教訓と知恵とはいったい何だったのか、それが次のテーマだ。
子供名義の積立投資が作る一番の資産は「積立投資の効果の証明」
筆者が親からもらった投資信託で得た一番の資産である教訓と知恵、それは、「積立投資の効果を実際に証明してくれたこと」である。どういうことか解説しよう。
投資について少し調べると、積立投資による資産形成で一番難しいのは「暴落時に売ったりやめたりしないこと」であるとわかる。つまり継続が難しい。じっくりと資産を築くのに耐えられず一攫千金を夢見て短期的なトレードにのめり込んで失敗したり、せっかく積立投資を始めても、焦りや不安から値下がりや暴落に耐えられず売ってしまって損をする話はいくらでも目にする。欲に負けたり、恐怖心に負けて市場の回復を待てず、市場の養分となる投資家はあまりにも多いが、これは人間の性なのだろう。
しかし、筆者はどうかといえば、不安になっても親からもらったインデックスファンドのチャートを見返せば時に暴落に見舞われながらも継続的に価格が上昇していたことをいつでも確認できるし、過去の暴落時に元本割れすら起こしていないことも計算すればわかる。下落相場に多少いら立つことはあるが、辞める気は全く起きない。経済評論家といったメディアでセンセーショナルに情報発信する専門家の意見に煽られても、「結局ドルコスト平均法が勝つのは現状、歴史が証明してるしな〜」と気楽に考えてスルーするだけである。むしろ「同じ積立額でも買える口数が増えてお得」くらいに思っているほどだ。
このように、効果を実際に証明することで、市場への耐性という積立投資の継続に必要な能力を子供に与えることができるのが、子供名義で投資をする一番のメリットである(ただし、ドルコスト平均法でのインデックスファンドへの投資でないと再現性は見込めないためそこは要注意だ)。
時間を武器に変えられるメリットも忘れてはならない
もう一つ、子供名義でインデックスファンドを積み立てるメリットがあるとすると、ドルコスト平均法の効果を出すために必須の時間を味方にできることがある。一般論として語られるメリットであるが、この効果は侮れない。
ドルコスト平均法でインデックスファンドに投資することの弱点は、ローリスクローリターンであるがゆえに、まとまった利益を出すためには時間がかかることである。中高年から投資を初めて失敗する人の定番の負けパターンが、定年や老後までの時間が無いことから焦ってハイリスクハイリターンの投機的商品に手を出すことだ。しかし、子供名義で投資をするなら、仮に0歳から始めた場合、成人する時をゴールにおいても18年とじっくり時間をかけて長期投資ができる。つまり、時間を武器にできるのだ。
別の言い方をすれば、ドルコスト平均法での積立投資は若いうちに始めるほど効果的ということである。このようなメリットからも、子供名義で投資をするのは十分にメリットが見込めると言えるだろう。
子供名義の投信はどこで買う?将来を考えてネット証券がおすすめな理由
ここまで子供名義で投信を含むインデックスファンドへの積立投資をするメリットを紹介してきたが、実際に子供のために投資を始めるならどこの証券会社や商品を使うのか?その答えをサクッと紹介したい。
結論から述べれば、SBI証券、楽天証券、マネックス証券といったネット証券各社がおすすめである。これは成人するときにNISAへ速やかに移行することと、投資先の選択肢の多さを考慮しての意見だ。
ご存じの通り、18歳から使える新NISAでもNISA口座を開設できる金融機関は1つのみであるのがルールだ。よって、うっかり投信の運用会社でNISAを始めた場合、NISAで非課税になるのはその運用会社が販売する投資信託という選択肢がかなり狭まった状態になってしまう。また、対面証券や銀行で解説した場合も、しつこい営業の相手をする必要があるため管理の手間が増える。
もちろん、子供が18歳になった時点で新NISAの口座を別の証券会社で作らせるのも1つの手ではあるが、この場合、管理する口座が2つに増えて手間が2倍になるというデメリットがあるので要注意だ。証券口座の管理は結構面倒が多い。
また、投資先の選択肢においても、ネット証券は優秀である。積立投資の観点で言えば、筆者の両親が投資していたセゾン投信を含め、大半のインデックスファンドはネット証券を通して買えるため、わざわざ特定の投信の運用会社に直接口座を作る意味は薄い。特定の商品を勧めるわけではないが、例えば、低コストなオルカンのインデックスファンドの筆頭といえる「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」はSBI証券でも楽天証券でもマネックス証券でも買えるし、auカブコム証券や新興勢力であるmoomoo証券も取り扱っている。
以上の理由から、子供名義で証券口座を作ったり、投資信託をはじめとした商品に積立投資をする場合はネット証券の利用が便利だ。あなたも自分の子供に、一生モノの良い教訓とまとまったお金を残してみてはいかがだろうか。